ドルトン東京学園中等部・高等部(東京都調布市、安居長敏校長)は2019年4月に開校した。アメリカで生まれた教育メソッド「ドルトンプラン」を導入し、「自由」と「協働」の2つの原理に基づく「ハウス」「アサインメント」「ラボラトリー」の3つの柱で一人ひとりの探究心や個々の能力を育んでいる。
STEAM棟のLC2。授業やラボ、教員の打合せでも利用される
柱の一つである「ラボラトリー」は生徒主体の探究的な学習を行う時間で、「基礎ラボ」(総合的な学習<探究>の時間に該当)と、テーマラボとオフィスアワーの2つで展開する「探究ラボ」を実施。各教科でも探究活動が行われている。
学校図書館は「ラーニングコモンズ(LC)」としてこれらの学びを支えている。校舎は教室棟とSTEAM棟があり、ラーニングコモンズは教室棟2FのLC1、STEAM棟2FのLC2の2つがある。図書館のメイン機能はSTEAM棟のLC2が担う。
関口教諭
「探究活動は、生徒一人ひとりのテーマも異なっているので、LCもそれに対応している」と話すのは、関口真弓司書教諭。専任の司書教諭の仕事の一つに、こうした探究のサポートを挙げる。
紙の蔵書は2つのLCで約2万8000冊。電子書籍や、朝日検索くん、ジャパンナレッジSchoolなどのデータベースも導入し、レファレンスの際には生徒に合わせて紙や電子の資料提供、場合によってはChatGTPの利用を案内することも。「さまざまなものをつなぐ」「紙と電子のハイブリッド」は、開校当初からのLCのコンセプトとなっている。
「つなぐ」取組は資料と生徒だけではない。資料提供などによる教科とLCをつなぐサポートと、さらにLCが教員にとっての”ハブ”になる取組にも力を入れる。
例年3月に開催される「Dalton Expo」では、生徒たちの1年間の学びを発表する。LC2ではその生徒の成果物を、初めに教員が出した課題と共に展示している。「課題」と生徒の「成果」が分かるようにすることで、教員同士がお互いの授業や他教科の学びに関心を寄せるきっかけを作っている。
生徒の成果物を展示
校内組織としては、探究部の直轄にLCがある。関口司書教諭は自身も基礎ラボなどの授業やテーマラボを担当。中学3年生の「Academic Skills(アカデミックスキルズ、AS)」の授業は2023年度から担当している。ここで時間をかけて情報活用についての授業を行うようになってからは、生徒の探究もインターネットからの情報に加え、図書資料も活用するようになったという。
開校当初から1人1台端末を配備し、普段のさまざまな授業で触れているので、生徒たちは当たり前にICTを活用している。同校では図書委員会の活動も活発で、生徒たちが自発的に取り組み、LCの案内動画や利用案内の冊子も作成。関口司書教諭も授業で活用する。「新しいICTツールの活用は、生徒たちと一緒に学んできた」と話す。
「司書教諭だけが頑張るのではなく、生徒と一緒につくる学校図書館、ということを大切にしている。LCをみんなに使って欲しいという生徒自身の気持ちを大事にしていきたい」。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年4月21日号掲載